まぼろしのひさいじょう
幻の久居城
久居藩の初代藩主・藤堂高通が、城づくりのために迎えたのが植木升安(うえきしょうあん)(?~1698)です。
升安は、兵学にも精通した都市計画の専門家でした。絵図1は、寛文9(1669)年ごろ、升安が最初に設計した久居城だと考えられています。
城あるいは城下町づくりでもっとも大切なのは、敵の侵入に対する防衛機能。絵図1によると、土塁や塀をめぐらせた堅固な要塞となっています。
しかし、当時、築城には江戸幕府の許可が必要で、幕府は久居城の設計についても城のまわりに塀をめぐらせてはならないことなどの命令を下しました。そのため、升安は設計を変更し、絵図2のような城や城下町になったと考えられます。
武士の住む城内と町人の住む町家とが完全に分離した久居城は、当時、もっとも進んだ考え方で、升安の優れた設計思想がうかがえます。